海洋の酸性化は意外に複雑 2

サイエンスエッセイ 8

  まずは前回のまとめから。いろいろ書きましたが、まとめれば簡単。

① 海水中には炭酸イオン(CO32-)と、炭酸イオンに水素イオン(H+)が付いた炭酸水素イオン(HCO3-)がある。

② 水素イオンが増えると炭酸水素イオンが増え、水素イオンが減ると炭酸水素イオンも減る。

 そこで今回は二酸化炭素(CO2)が海水にとけるところから。

 CO2が海水に溶けると炭酸(H2CO3)になります。この炭酸は海水中でイオンになって2つの水素イオン(H+)と1つの炭酸イオン(CO32-)になります。ここで水素イオンが2つできるのに炭酸イオンは1つしかできないのがポイントです。

 炭酸イオンは水素イオン1つとくっついて炭酸水素イオンをつくります。そうするとあとひとつ水素イオンが残ります。このイオンが海水中にあった炭酸イオンとくっついて炭酸水素イオンをつくります。 CO2 が溶けるにつれて水素イオンが増えるので、炭酸水素イオンも増え、その分炭酸イオンが減ってしまいます。

 こうして海水中の炭酸イオンが減ってしまうので、サンゴや貝や有孔虫などの生物は体の主な成分の炭酸カルシウムを作りにくくなってしまいます。

   Ca2+  +  CO32-  ↔  CaCO3

 今のところ、炭酸カルシウムを作りにくくなったことによる、具体的な被害はよくわかっていません。ただ、最近の研究ではサンゴなどは炭酸カルシウムを作りにくくなることよりも、海水の温度が上がることで共生していた藻が育たなくなることの影響の方が多いそうです。