デジタル対話の遅れ

サイエンスエッセイ 1

 先日LINEで会話をしていて「あれ?」と思ったことがあります。

 webの通話は時々通信状態が悪くなって切れ切れになることがあります。「わた…のな…○で…」みたいに聞こえると思っていたら、「わた…しのな…まえは〇…○で…す」のように、データの欠損がなく聞こえたのです。

 これはデジタルの通話では考えられることです。アナログの通話では対話する1組ごとに回線が1回線占有されます。常時電流が流れ、その強さの強弱で信号を送っているからです。だからアナログ通話の回線は1回線ごとに1本の電線になり、膨大な電線が使用されます。100組が同時に対話すれば100本の電線が必要なのです。

 それがデジタルになると、そしてデジタル化の大きな利点なのですが、1回線で複数の通信を送ることができます。信号を一定時間分ためこんで固まりにした上で行先を示すデータをつけて送り出すのです。この固まりをパケットといいます。パケットを運ぶ速度はとても速いので、いくつものパケットを同じ回線に載せることができます。受け取る方はパケットに付いているの行先の情報を読んで、「あ、これはうちのデータだ」と受け取ります。

 これは、宅配便や郵便物の仕分けに似ています。1本のラインの上を多数の荷や郵便物が流れ、付属のバーコードを読んで行先ごとに分類されていきます。例えばhttps://www.youtube.com/watch?v=8vllq9mlL58&t=78s

回転寿司などでも利用されていますね。

 ところで、会話をいったんためこんでデジタルにしてまとめて送り、それを解いてもとの声にもどすので、どんなに高速で実行しても遅れが生まれます。それを確認するには、すぐそばの人と携帯電話で話してみてください。直接聞こえる声と電話から聞こえる声には「ずれ」があるでしょう。

 さらに、このパケットは行先が示されていますから世界中のどこを巡っても届きます。コンピュータは空いている回線を探して送り出すので、あなたの声は一度アメリカやヨーロッパを回って届いているかもしれないのです。そうすると、遅れはどんどん大きくなります。

 そしてこの場合、遅れたとしても情報はなくなってはいません。声がとぎれとぎれになっても情報はつながっています。

 一方、例えば通信の電波が途切れたりすると、その部分の情報は届かなくなります。この場合は声がとぎれとぎれになると、その部分は届きません。

 一般にデジタルの伝送による遅れは感覚では気付かない程度だとされているので、今回の「あれ?情報が途切れていない」というのは筆者の勘違いかもしれません。スマホで話していて、特にネット経由で話しているとき途切れたら、次に聞こえた声は切れる前とつながるか、切れている間の情報が欠落しているか調べてみてください。もし情報が途切れていなかったら、その遅れはその後どうやって取り戻しているかも知りたいですね。

筆者宅の電話。現役で働いています。通話には問題なし。「#ボタンを押してください」というアナウンスが苦手